おう、あんちゃん。
聞いてくれるかい?
おれが若いころの話。
おれはよう、兵隊だったんだ。
あの忌まわしき太平洋戦争で
メリケンのアーミーとドンパチやってたんだ。
そんときに上官にボッコボコにされた話を
今日は聞かしてやるよ。
立ち話も何だから
まぁ、座んな。
・・・って、もう座ってんじゃねぇか!
えっと、どこまで話したっけ?
まだ何も話してねぇよ、べらんめぇ。
おれが兵隊だったころの話だよな。
ある日、上官から隊の集合が掛かったんだ。
なんてことは無いよ。
集合が掛かんのは日常茶飯事だ。
ビシッと整列してるおれたちに向かって
ふんぞり返った上官が言ったんだ。
「我が大日本帝国は、今まさにメリケンに対し
最後の追い討ちを仕掛け、大勝利を納め
この幕を閉じる寸前まで来ておる!
そんな勝利を目前とした状況で
重要なカギを握るのはイチにもニにも『情報』だ!
自軍に劣勢となる隊を知れば応戦する。
優勢たる隊を知れば援軍を願う。
敵軍の奇襲を事前につかめば、これを対策することが可。
憩(いこ)う時と場を知れば、こちらの奇襲が可。
自軍と敵軍の戦歴・戦況・戦略、これらの情報把握が
我が軍に大勝利をもたらすこととなる。
さて、そこでだ。
情報を無線機によって収集するも一手だが、
無線機はメリケンに盗聴される可能性が高い。
しかし、幸いなこと先日のメリケンの偶然たる猛攻により
我々の無線機は完膚無きまでに叩きのめされた。
よって次なる情報入手の手段は『交通』だ。
本部・本隊・分隊とを情報でつなぐ『交通』こそがカギを握る。
その交通を戦車・軍用車でまかなうのも
これまた戦火における定石であるが、
戦車・軍用車は道なき戦場において通行ルートが限られる。
そして何より貴重な燃料を大量に要する。
うちのアパート近所にある『水まじりガソリン』とウワサされる
ガソリンスタンドですら、レギュラーがリッター154円というのが現状だ。
どうあれ戦車・軍用車は困難だ。
そこでだ!
最終手段、バイクでの往来を考案した。
これならば小回りも効くうえに燃費も都合がよい。
しかしながら問題がひとつ。
バイク運転資格者は、我が軍において手薄である。
ここにバイク運転資格者を集う!
この中にバイク運転の経験者はおるか!」
こんな具合にだよ、
上官はおれらに助けを求めたんだよ。
おれは迷わず名乗り出たよ。
これが日本勝利のきっかけになれば
おれは勲章もんだからよ。
「山田二等兵!自分はバイクに乗れるであります!」
いつも睨(にら)みばっかり効かしてる鬼上官も
こんときばかりは、おれに対して
救世主を見つめるような眼差(まなざ)しなんだよ。
その眼差しのまんま、もうひとつ訊いてきたんだ。
「貴様は どんなバイクに乗っておったんだ!」
ここでもおれは迷わず答えたよ。
「はい!『自転車』であります!」
気付いたら、おれは軍用医療所の寝台の上。
仲間が言うには、「す!」の字のコンマ2秒後には
自信満々のおれの左頬に上官の右ストレートが炸裂し、
抵抗する間もなく、そのままボッコボコにされたらしいんだけど、
おれは全然覚えちゃねぇよ。
それにしてもひでぇよな。
おれが生まれ育った下石村は
バイクといやぁ、自転車のことだったんだよ。
もっと言えば「ケッタ」って呼ぶんだぜ。
調子のいい日にゃ「ケッタマシーン」って呼んじゃうよ。
いつしかバイクを「自動二輪」って聞いたときは
「お?てめえも調子いいじゃねぇか!」って思ったぐらいだ。
ちなみに下石村の林反物洗濯商店の前の
清一っつぁんの倅(せがれ)は
原付のことを どれでも「カブ」って呼んでるけどね。
あれはいただけねぇ。
まぁ、おれが言いてぇのはそんなもんだ。
今日はこれぐらいにしといてやるよ。
え?
孫の借金?
よっしゃ。
また次に来たときだ。
今度は おれがスズメバチに刺されたときの話
聞かしてやるよ。
あんたの話を聞くのは それからだ。
JUNIOR
P.S. 今回の相互カヴァー企画、
なんだか程よい罪悪感もあり
個人的には大好物です。
聞いてくれるかい?
おれが若いころの話。
おれはよう、兵隊だったんだ。
あの忌まわしき太平洋戦争で
メリケンのアーミーとドンパチやってたんだ。
そんときに上官にボッコボコにされた話を
今日は聞かしてやるよ。
立ち話も何だから
まぁ、座んな。
・・・って、もう座ってんじゃねぇか!
えっと、どこまで話したっけ?
まだ何も話してねぇよ、べらんめぇ。
おれが兵隊だったころの話だよな。
ある日、上官から隊の集合が掛かったんだ。
なんてことは無いよ。
集合が掛かんのは日常茶飯事だ。
ビシッと整列してるおれたちに向かって
ふんぞり返った上官が言ったんだ。
「我が大日本帝国は、今まさにメリケンに対し
最後の追い討ちを仕掛け、大勝利を納め
この幕を閉じる寸前まで来ておる!
そんな勝利を目前とした状況で
重要なカギを握るのはイチにもニにも『情報』だ!
自軍に劣勢となる隊を知れば応戦する。
優勢たる隊を知れば援軍を願う。
敵軍の奇襲を事前につかめば、これを対策することが可。
憩(いこ)う時と場を知れば、こちらの奇襲が可。
自軍と敵軍の戦歴・戦況・戦略、これらの情報把握が
我が軍に大勝利をもたらすこととなる。
さて、そこでだ。
情報を無線機によって収集するも一手だが、
無線機はメリケンに盗聴される可能性が高い。
しかし、幸いなこと先日のメリケンの偶然たる猛攻により
我々の無線機は完膚無きまでに叩きのめされた。
よって次なる情報入手の手段は『交通』だ。
本部・本隊・分隊とを情報でつなぐ『交通』こそがカギを握る。
その交通を戦車・軍用車でまかなうのも
これまた戦火における定石であるが、
戦車・軍用車は道なき戦場において通行ルートが限られる。
そして何より貴重な燃料を大量に要する。
うちのアパート近所にある『水まじりガソリン』とウワサされる
ガソリンスタンドですら、レギュラーがリッター154円というのが現状だ。
どうあれ戦車・軍用車は困難だ。
そこでだ!
最終手段、バイクでの往来を考案した。
これならば小回りも効くうえに燃費も都合がよい。
しかしながら問題がひとつ。
バイク運転資格者は、我が軍において手薄である。
ここにバイク運転資格者を集う!
この中にバイク運転の経験者はおるか!」
こんな具合にだよ、
上官はおれらに助けを求めたんだよ。
おれは迷わず名乗り出たよ。
これが日本勝利のきっかけになれば
おれは勲章もんだからよ。
「山田二等兵!自分はバイクに乗れるであります!」
いつも睨(にら)みばっかり効かしてる鬼上官も
こんときばかりは、おれに対して
救世主を見つめるような眼差(まなざ)しなんだよ。
その眼差しのまんま、もうひとつ訊いてきたんだ。
「貴様は どんなバイクに乗っておったんだ!」
ここでもおれは迷わず答えたよ。
「はい!『自転車』であります!」
気付いたら、おれは軍用医療所の寝台の上。
仲間が言うには、「す!」の字のコンマ2秒後には
自信満々のおれの左頬に上官の右ストレートが炸裂し、
抵抗する間もなく、そのままボッコボコにされたらしいんだけど、
おれは全然覚えちゃねぇよ。
それにしてもひでぇよな。
おれが生まれ育った下石村は
バイクといやぁ、自転車のことだったんだよ。
もっと言えば「ケッタ」って呼ぶんだぜ。
調子のいい日にゃ「ケッタマシーン」って呼んじゃうよ。
いつしかバイクを「自動二輪」って聞いたときは
「お?てめえも調子いいじゃねぇか!」って思ったぐらいだ。
ちなみに下石村の林反物洗濯商店の前の
清一っつぁんの倅(せがれ)は
原付のことを どれでも「カブ」って呼んでるけどね。
あれはいただけねぇ。
まぁ、おれが言いてぇのはそんなもんだ。
今日はこれぐらいにしといてやるよ。
え?
孫の借金?
よっしゃ。
また次に来たときだ。
今度は おれがスズメバチに刺されたときの話
聞かしてやるよ。
あんたの話を聞くのは それからだ。
JUNIOR
P.S. 今回の相互カヴァー企画、
なんだか程よい罪悪感もあり
個人的には大好物です。
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プロフィール
HN:
JUNIOR
年齢:
44
性別:
男性
誕生日:
1980/08/07
職業:
草野球選手
趣味:
趣味さがし
自己紹介:
好きな食べ物は米とライス。
好きな飲み物は水とカレー。
人と話すと元気が出ます。
得意な球技は内野ノックです。
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得意な球技は内野ノックです。
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