人が成長するために大切なものが3つほど。
ひとつ。人の話を聞くこと。
ひとつ。本を読むこと。
ひとつ。旅をすること。
そうだ。伊賀へ行こう。忍忍。
さかのぼること1ヶ月前。
軍団Kの4番センター・西川星人との酒の席にて。
昨年11月に挙式を挙げたヤノッチとさゆりちゃんが
新婚生活を送る三重県伊賀市に馳(は)せ参じることを決意。
婿養子として転がり込んで肩身を狭くして、
さぞ なで肩になったであろうヤノッチショルダーを
ナデナデすることが旅の目的。
事前に西川-ヤノッチ間におけるホットラインで やりとり。
ミスター段取リーこと、ヤノッチが絡めば
とんとん拍子に計画は進む。
元々は日帰りで予定してましたが
ヤノッチから「日帰り?or 泊まり?」と、
機内食を運んできたCAのように問いかけてきたので
「泊まります。あわよくば居座ります。」と力強く返答。
旅は1泊2日で決行されました。
「おとうさんは お酒が好き」という情報を頼りに
焼酎と おつまみアイテムを、
「スイーツ嫌いな女性はモグリだ」という名言を思い出し
おかあさんとさゆりちゃん向けにケーキを
おみやげとして持ち込みました。
ヤノッチ向けの おみやげは
僕たちの笑顔さえあれば、むしろ おつりが出ると計算。
おみやげ探しに あれこれ立ち寄りすぎて
出発予定時刻を はるかにオーバーしたものの、
いざ車を走らせたらスイスイ進み、無事に到着。
ヤノッチに指定された場所は、組紐の展示館。
ヤノッチは組紐屋さんの娘さんと結婚したわけで、
サラリーマンからそちらの家業へ転身したわけで、
すなわち ここがヤノッチの職場になるわけで。
ヤノッチに勧めていただくまま、まずは展示館を覗きました。
そこに居たのは看板娘兼ヤノッチの奥様・さゆりちゃん。
早くもツーショットを拝むことができました。
さゆりちゃんが入口で
「段差があるから気をつけてくださいね」って
わざわざ言ってくれたので、
「ごっつぁんです」とばかりに転ばせていただきました。
展示館には売り物だけでなく、簡単な組紐体験コーナーもありました。
これを執拗(しつよう)に勧めてきたヤノッチ。
西川と僕が作業に渋々取り掛かると
ヤノッチが嬉しそうに上から目線でレクチャーしてくれました。
展示館をあとにして、いよいよ ご自宅を訪問。
ガレージのシャッターをリモコン操作しちゃってる生活レベルを確認した時点で、
「間違いなく この お宅のトイレはウォッシュレット装備や!」と
僕のデリケートな肛門が ほころびました。
晩ごはんまで時間がたっぷりございます。
西川と僕は「いまいち 気がのらないので」ということを理由に
昨年11月の ふたりの披露宴に参加しませんでした。
ってことで、披露宴のDVDや写真を堪能させていただきました。
とにかく わかったことは
トクオカの声がよく通ることと、
その割にボキャブラリーが少ないという事実。
ヤノッチの妹はヤノチコ。ヤノチコの弟はヤノチオ。
写真で見たけどヤノチオは男前でした。
いつの間にやら日は暮れて、
おとうさんも おかあさんも ご帰宅されて
今宵レッツご自宅パーティナイト。
恐れ多くも おとうさんの隣という
ポールポジションを取らせていただきました。
この日の おもてなしは、名物・伊賀牛によるセレブ焼肉。
お酒も ふんだんに完備。
「この家の裏には牧場でもあるのかな?」って疑いたくなるほど、
次から次へと肉を足していただけました。
口は肉と酒が入るばかりでなく、
たくさんの会話が飛び出しました。
終盤になると、さゆりちゃん特製の「豚丼」が炸裂。
「おとうさんがゴキゲンなときにしかゴーサインが出ない」という
特別メニュー(翌日のさゆりちゃん談)だそうです。
西川と僕には無条件で生卵がライド・オン。
ヤノッチが生卵をリクエストすると、
「卵代」として月末の給料から天引きされる(おとうさん談)と知りながら
ヤノッチも卵をドラフト指名しました。
食事を終えても会話は進む。
みんなでテーブルを囲んだまま夜は更ける。
気付けば時計の針は11時。
ヤノッチ、西川、僕の3人は、近所のスーパー銭湯へ。
おかあさんに車で送ってもらいました。
お風呂屋さんへの道中で、おかあさんが
「これが伊賀のメインストリートね」と
情緒溢れる軒並みを紹介してくれたり、
「あそこに忍者が3人おるんよ」と
メインストリートのゲートに乗っかった忍者の存在を教えてくれました。
世間から隠れて忍んでなんぼの職業である忍者の姿を見つけるなんて、
おかあさんは かなりハイレベルな「くの一」であることを思い知らされました。
そして間もなく目的地に到着ってあたりで
なぜか「ここがパチンコね」って
特に変わった外装でもないパチンコ屋さんを紹介してくれました。
おかあさんの中でパチンコ屋さんは、
伊賀にだけあるアミューズメントパークという設定なのかもしれません。
千葉にディズニー。伊賀にパチンコ。
銭湯では意味もなくヤノッチに冷水をかけたり、
シャンプーを洗い流すヤノッチの上から
エンドレスでシャンプーをシュポシュポしたりして
ヤノッチに叱られました。
「必要以上に頭皮の毛穴の皮脂を流すと
毛は抜けやすくなるんですよ!!」って、
ちょっと変わった角度からヤノッチに叱られました。
体はサッパリしたけど、この一件で人間関係がギスギスした僕たちは
再び帰宅。
すでに布団は3人分並べてある状態。
布団を「川」から「河」の字に並べ替えて
スクランブルな姿勢で眠りに就きました。
気付けば朝方。
電話が鳴り出し、目が覚めました。
携帯電話ではなく、ご自宅電話。
寝てる僕の頭上あたりに子機が置いてあり、
横からヤノッチの手が伸びました。
お婿さんとはいえ当たり前のことやけど、
家の電話に応答しようとするヤノッチを見て
「すっかり この家の一員やね」と しみじみ。
と思った瞬間、ヤノッチは こともあろうに
電話の手前にあるボックスティッシュを手に取り、
小さい声で「あ・・・違う・・・」って言った瞬間、
これがまた ええタイミングで電話も鳴り止みました。
寝起きで こんなに早く笑わされることは後先ないと思います。
しばらくしてから完全に目を覚まし布団から脱皮すると、
すでにさゆりちゃんが朝ごはんを ご用意。
さすが若奥様。
「良かったら使ってください」とハブラシとフェイスタオルまで ご用意。
さすが若奥様。
顔を洗い、朝ごはんを食べ、コーヒーをいただき、さてさて
ハブラシの袋をパリッと開けたら、まさかのサプライズ。
ヘアブラシやないか。
さらに言えば、僕にはブラッシングするほどのヘアは ございません。
やはり若奥様。
朝ごはんを終えてから
なでしこリーグの選手名鑑を西川と開いて
「いっせーのーde ゲーム」をしてみたり、
前日だけでは完了できなかった披露宴のVTR、二次会のVTRを確認。
ヤノッチとさゆりちゃんの結婚式を完全制覇。
これで披露宴参加したメンバーとも、肩を並べて思い出話ができます。
あとは余興でやってたダンスの振り付けを覚えたら文句なし。
出発は昼前かなと思ってたら、気付けば正午近く。
ここで まさかの「昼ごはん用意中」という実況報告を受けました。
人の厚意は甘んじて受ける。コレすなわち僕のおとんの教え。
最後の最後は おみやげまで握らせてもらい、滑らせるようにカバンの中へ。
この滞在中に西川の車を停めておいた、初めの展示館まで行くと
今日はおかあさんが店番をしてました。
僕たちが「2日間ありがとうございました」と告げると
おかあさんは「なんか今から帰るみたいやんかー」と笑い飛ばす。
え?いや。そのつもりですけど・・・。
本当に帰ることを知ると、あれだけ温厚な おかあさんが
この2日間でいちばんの不機嫌顔を見せてくれたことが
僕にとって いちばん嬉しいメッセージでした。
なのに展示館の前で おかあさんも交えて記念写真を撮ろうと提案すると
おかあさんから「わたしはイヤ!」と、まさかの撮影断固拒否。
じゃあ3人でってことで、僕がデジカメのセルフタイマーをコチョコチョしてると
おかあさんが「シャッター押すよー」って小走りで寄ってくる全面協力ぶり。
この満ち引きの繰り返しに西川と僕のハートはわしづかみ。
展示館でも根こそぎ おみやげをもらいました。
この振る舞いによって良心の呵責に苦しんだ僕たちは
前日こっそりと万引きしたことを正直に自首。
僕たちの将来と、ヤノッチたちの器のでかさに免じて何とか不起訴成立。
こうして数々のわだかまりを残したまま、僕たちは帰路に着きました。
1ヶ月前の思いつきから起こした旅ですが
想像をはるかに越える楽しさでした。
あそこまで歓迎していただけるとは。
ヤノッチはヤノッチのままでしたし。
そんなヤノッチと一緒に居るさゆりちゃんは幸せな顔でしたし。
さゆりちゃんのルーツが おとうさんと おかあさんであることも
よくよく わかりましたし。
本当に素敵な1泊2日でした。
ありがとうございました。
帰りの車中、西川と僕は
「こういうシリーズ、誰かの実家に行くとか
これから いろんなパターンでやりたいな~」と
口を揃えて言う。
「・・・じゃあ、今度は西川ん・・・」
「うちはダメですよ!」
あぁ・・・。わかった。
その代わり、昨夜も言ったように
いつか僕の棺(ひつぎ)には生ピザを入れ、
焼き上がったら弟に渡してください。
準備に始まり、お見送りまで
楽しい旅をありがとう。
JUNIOR
好きな飲み物は水とカレー。
人と話すと元気が出ます。
得意な球技は内野ノックです。